JABTS
教育委員会主催第3回乳房超音波講習会

 

 

 

 

超音波診断に必要な乳房疾患の知識

京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科
沢井清司

 

1.乳癌は増えている
  我が国で乳癌に罹患する女性は、1年間3万5千人を超えるようになりました。
これは、女性30人に1人が乳癌になる計算になります。15年後には、さらに今の
1.5倍に増加すると予測されています(図1)。また我が国は、40歳代、50歳代の
罹患率が高いのが特徴です(図2)。このように我が国で乳癌が急増しているの
は、結婚・出産の高齢化、母乳を与えない女性の増加など女性の社会進出と関
連しています。したがって乳癌の発生を予防することは不可能と考えられるので、
検診による早期発見以外に乳癌死を減少させることはできません(図3)。



2.乳癌検診の目的と効果
  乳癌検診の目的は、早期発見早期治療により乳癌死を減少させることにありま
す。実際、米国や英国では検診の普及により乳癌死は減少しつつあります(図4)。
また、早期発見すれば、侵襲の少ない手術で治療することができ、化学療法や
放射線療法も不要になるばかりでなく、治療後のQOLも良好となり(図5)、
治療期間も短く、治療費も安価になります(図6)。



3.乳房の解剖
  乳頭には、15〜20本の乳管が開口しています。1本の乳管は深部に入ると枝
分かれしながら腺葉を形成しています。また、各腺葉は結合織と脂肪により隔て
られています。乳腺は、皮下筋膜浅葉と皮下筋膜深葉の間にあり、クーパー靭
帯で固定されています(Anti-Cencer-Guide,p22-23)。

4.乳腺疾患の分類
  別表参照

5.乳癌の進展様式
  乳癌は、乳管内上皮や小葉に発生し、乳管内に広がるとともに乳管外の脂肪
や結合織に広がり、さらには皮膚や大胸筋まで広がることもあります。乳管内の
みに留まるものが非浸潤癌です。


乳腺腫瘍の組織学的分類 乳癌取扱い規約【第14版】

I. 上皮性腫瘍 I. EPITHELIAL TUMORS
A. 良性 A. Benign
1. 乳管内乳頭腫 1. Intraductal papilloma
2. 乳頭部腺腫 2. Adenoma of the nipple
3. 腺腫 3. Adenoma
B. 悪性(癌腫) B.Malignant (Carcinoma)
1. 非浸潤癌 1. Noninvasive carcinoma
a. 非浸潤性乳管癌 a. Noninvasive ductal carcinoma
b. 非浸潤性小葉癌 b. Lobular carcinoma in situ
2. 浸潤癌 2. Invasive carcinoma
a. 浸潤性乳管癌 a. Invasive ductal carcinoma
a1. 乳頭腺管癌 a1. Papillotubular carcinoma 
a2. 充実腺管癌 a2. Solid-tubular carcinoma
a3. 硬癌 a3. Scirrhous carcinoma
b. 特殊型 b. Special types
b1. 粘液癌 b1. Mucinous carcinoma
b2. 髄様癌 b2. Medullary carcinoma
b3. 浸潤性小葉癌 b3. Invasive lobular carcinoma
b4. 腺様嚢胞癌 b4. Adenoid cystic carcinoma
b5. 扁平上皮癌 b5. Squamous cell carcinoma
b6. 紡錘細胞癌 b6. Spindle cell carcinoma
b7. アポクリン癌 b7. Apocrine carcinoma 
b8. 骨・軟骨化生を伴う癌 b8. Carcinoma with cartilagious and/or osseous metaplasia
b9. 管状癌 b9. Tubular carcinoma
b10. 分泌癌(若年性癌) b10. Secretary carcinoma, (Juvenile carcinoma)
b11. その他 b11. Others
3. Paget病 3. Paget’s disease
   
II. 結合織性および上皮混合腫瘍 II. MIXED CONNECTIVE TISSUE AND EPITHELIAL TUMORS
A. 線維腺腫 A. Fibroadenoma
B. 葉状腫瘍(葉状嚢胞肉腫) B. Phyllodes tumor (Cystosarcoma phyllodes)
C. 癌肉腫 C. Carcinosarcoma
   
III. 非上皮性腫瘍 III. NONEPITHELIAL TUMORS
A. 間質肉腫 A. Stromal sarcoma
B. 軟部腫瘍 B. Soft tissue tumors
C. リンパ腫および造血器腫瘍 C. Lymphomas and hematopoietic tumors
D. その他 D. Others
   
IV. 分類不能腫瘍 IV. UNCLASSIFIED TUMORS
   
V. 乳腺症 V. MASTOPATHY (FIBROCYSTIC DISEASE, MAMMARY DYSPLASIA)
   
VI. 腫瘍様病変 VI. TUMOR-LIKE LESIONS
A. 乳管拡張症 A. Duct ectasia
B. 炎症性偽腫瘍 B. Inflammatory pseudotumor
C. 過誤腫 C. Hamartoma
D. 女性化乳房症 D. Gynecomastia
E. 副乳 E. Accessory mammary gland
F. その他 F. Others


 

 

最終更新日 : 2003/10/01

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