【はじめに】われわれは、コンピュータを利用した診断支援(CAD:Computer-Aided
Diagnosis)による超音波三次元画像の乳腺腫瘍良悪性自動診断(ABCD-3DUS:Automated Breast Cancer Diagnosis
by Three Dimensional
Ultrasound)システムを研究、開発している。今回、本システムを用いて乳腺腫瘍287症例を対象にその有用性を検証した。
【対象】臨床経過および病理学的に証明された乳腺良性腫瘍182例および悪性腫瘍105例
【方法】使用機器は、市販の超音波診断装置(アロカ社製SSD2000,5500)、7.5〜10MHzリニア電子式プローブ、交流磁界位置検知装置、パソコンなどである。まず乳腺腫瘍を超音波画像で描出し、そのビデオ信号と同時にプローブに取り付けた交流磁界センサの動きから位置と方向の情報をパソコンに入力、保存する。これらの情報からコンピュータを用いて三次元座標変換し、立体画像を作成する。さらにファジイ推論及び弛緩法を利用して乳腺腫瘍領域だけを自動抽出し、サーフェス・レンダリングによる乳腺腫瘍の超音波三次元画像を構築する。そして良悪性を判別するために、定量的三次元パラメータとしてS/V
index、3D-D/W、Minkowski
Dimensionなどを使用し、これらを含んだ良悪性判定式を用いる。これを287症例に対して腫瘍毎に計算し、その判定結果をもとに本システムにおける良悪性診断の評価を行なった。
【結果】本システムにおいて、悪性腫瘍を陽性と正しく判定する感度は92%、良性腫瘍を陰性と正しく判定する特異度は81%、良性・悪性とも正しく判定する正診率は85%であった。
【考察】このCADを用いた超音波三次元画像による乳腺腫瘍の良悪性診断の感度は92%、正診率は85%であり、検診などの判定補助や腫瘤精査時のsecond
opinionとして利用できる可能性が示唆された。