JABTS
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乳腺疾患診断ガイドライン
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a. 円形 / 楕円形 (round / oval) | ![]() |
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b. 多角形 (polygonal) | ![]() |
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c. 分葉状 (lobulated) | ![]() |
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d. 不整形 (irregular) | ![]() |
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分類の説明:表に示すように“くびれ”および“かど”の有無で分類する。また、形状の複雑性も考慮する。
くびれ | かど | |
a.円形 / 楕円形 (round / oval) | - | - |
b.多角形 (polygonal) | - | + |
c.分葉状 (lobulated) | + | - |
d.不整形 (irregular) | + | + |
2.境界部
境界部とは境界、辺縁及び周辺をさす。(図1)
境界とは、腫瘤と非腫瘤部(または臓器と他臓器など)の接する面
辺縁とは、境界付近の腫瘤(や臓器)部分
周辺とは、腫瘤(や臓器)に近い非腫瘤部分
境界部とは、境界付近の辺縁及び周辺を合わせた部位
性状:明瞭平滑
明瞭粗糙
不明瞭
評価困難
付記:境界部高エコー像を有する
(注)腫瘤の性状をもっとも表している断面像で判定する。
所見が2つ以上存在するときは、これらを併記する。
境界明瞭とは、辺縁と周辺が1本の線で区分されるもの
境界部高エコー像(ハロー):腫瘤と周辺組織との境界部で発生する、
周囲(脂肪)組織より高いエコー像をいう。従来の不規則帯状の
境界エコーに相当する。
境界部高エコー像を有する部位では、真の境界の位置を決める
ことが困難であるので、境界は不明瞭とするのが妥当である。
境界不明瞭:境界不明瞭な部分では、平滑か粗糙かは評価できない。
評価困難:評価困難は評価対象の境界部分が(減衰などにより)表現
されていないものである。
境界の明瞭度
1)腫瘤の辺縁と周辺の輝度の差で決まることが多い。
2)輝度の差が小さくても、勾配が急な場合には境界に気づきにくいが、
一度認識できれば境界を線として追うことが可能な場合もある。
3)輝度の差が小さくても、腫瘤内部と周辺とのテクスチャが異なる場合
も境界を線として追うことが可能な場合もある。
3.内部エコー
内部エコーとは腫瘤内部からのエコーを意味する。但し境界部は含まない。
内部エコーは、一定の面積を持ったものについて、均質性とエコーレベルの2項目について評価する。
異なった内部エコー性状を有する領域が2つ以上存在するときは、これらを併記する。
嚢胞・充実部分の混在する mixed pattern を呈する腫瘤の場合は、充実部分について評価する。
腫瘤前面での反射・散乱による超音波の透過損失や腫瘍内部での減衰によって、内部エコーの評価が困難な場合がある。
・均質性(均一性) homogeneity
内部エコーの分布(テクスチャ)の規則性 について評価する。
a. 均質 homogeneous
b. 不均質 heterogeneous
・エコーレベル echo level
エコーレベルとはエコー強度 intensity のことである。乳腺組織ではなく、クーパー靭帯
などの線維性組織を除く皮下脂肪層 subcutaneous fat
layer のエコーレベルを基準と
して、5段階に分類する。
無 free
極低 very low
低 low
等 equal
高 high
付記:内部エコーに関して以下の所見を認める場合は、これを付記する。
@(腫瘍内)高エコースポット echogenic spot>
石灰化を示唆する。以下の3つに分類する。
・ 微細点状高エコー fine echogenic spot
≦1mm
・ 点状高エコー echogenic spot
>1mm
・ 粗大高エコーcoarse
3〜5mm以上で、単発(または単発の集合)で、音響陰影を伴う。良性。
A嚢胞
B液面形成 FFL fluid-fluid level
4.周辺の所見
腫瘤周辺(境界より外側)に観察される所見をこの項にまとめた。その成因により
2つに分類される。
1)音響的所見
超音波による音響的な特性で認められる所見
a. 後方エコー(posterior echoes)
腫瘤の後方(底面より後方)に認められるエコーであり、同じ深さに存在する周囲のエコ−レベルと比較し次の4段階に分ける。
1. 増強
2. 不変
3. 減衰
4. 消失
注)所見が2つ以上存在するときはこれらを併記する。
b. 外側陰影(lateral shadow)
腫瘤後方の外側に存在する音響陰影。
2)組織的所見
腫瘍の浸潤、進展等によって生じた周辺の所見を反映したもの。
a. 前方・後方境界線
乳腺の境界面を覆っている被膜は、主に浸潤癌により破壊され、超音波画像では
境界線の断裂として描出される。
b. 管状エコー
乳管内の増殖性病変は、管状の低エコー域として描出される。腫瘍に続く低エコー
像は乳管内成分の可能性が高い。また、分泌液の貯留や血管または拡張した
リンパ管などは無エコーとなる。
c. 浮腫
d. 皮膚の肥厚
e. クーパー靱帯の肥厚
f. 構築の乱れ
g. リンパ節 等
B. 腫瘤の計測
1.腫瘤径
超音波断層像において、腫瘤の最大径を有する面(最大径面)とそれに直交する面で計測する。
計測の手順は、まず腫瘤の最大径を含む面Aにおいて最大径aを計測し、次に同線と直交する線のうち最大の線cを計測する。そして最大径面と直交する断面における最大横径bを計測する。
腫瘤径はa×b×cmmと表示する。
腫瘤径には境界部高エコーを含める。
2.縦横比
腫瘤の縦径を横径で除したもの。
腫瘤径を計測した断面、すなわち腫瘤最大径面において計測する。この場合の
縦径横径とは、超音波画像において体表(皮膚)と平行する方向を横、それと
直交する方向、すなわち腹背方向を縦、とする。
縦横比は境界部高エコーを含めず、低エコー部分を計測する。
3.位置の表示
腫瘤の位置は、日本乳癌学会の表示(A,B,C,D,E,C’)および、時計軸と
乳頭中心ー腫瘤中心間距離を用いて表示する。
また、乳頭からの距離を3等分に分けた同心円と時間軸による分類も用いられる。
乳頭ー腫瘤間距離(nipple-tumor distance, NT distance)は、乳頭基部の乳頭中心
から腫瘤の乳頭側辺縁までを実測する。
乳管内成分が観察される場合には、その長さを計測する。
必要に応じて、乳管内成分の乳頭側端から乳頭までの距離を計測する。
(nipple-lesion distance)
U.腫瘤の評価
腫瘤は、形状、大きさを位置とともに記載し、境界部、内部エコー、音響的所見、
随伴所見、縦横比などを用いて評価する。
評価は、カテゴリーを用いてあらわすとともに、組織構成を推定し、超音波診断とする。
日本超音波医学会:乳腺疾患診断基準(案)腫瘤像形成性病変診断基準
1. 診断基準
良性 悪性 | |
形状 | 円・楕円形 多角形 分葉形 |
境界:明瞭性 | 明瞭 不明瞭 |
性状 | 平滑 粗ぞう |
ハロー | なし あり |
乳腺境界線の断裂 | なし あり |
内部エコー:均質性 | 均質 粗大 |
高エコースポット | 不均質 微細 |
硬さ | 軟 硬 |
縦横比 | 小 大 |
vascularity | Avascular or hypovascular hypervascular |
平成15年4月バージョン
T.腫瘤像非形成性病変とは
腫瘤像非形成性病変とは、腫瘤像として認識困難な病変をいう。
腫瘤像形成性病変と併存することもある。
U.腫瘤像非形成性病変を理解するための正常乳腺像とバリエーション
乳腺像に変化を与える要素:年齢、妊娠、・授乳、ホルモン補充療法など
V.超音波検査にて観察される可能性のある主な対象疾患
乳管拡張 | duct dilatation |
乳管拡張症 | duct ectasia |
(形質細胞性乳腺炎を含む ) | (plasma cell mastitis) |
乳管内乳頭腫(症) | intraductal papilloma, multiple intraductal papilloma |
乳腺症 | mastopathy |
上皮過形成 | epithelial hyperplasia |
腺症 | adenosis |
多発嚢胞 | multiple cyst |
線維腺腫性過形成 | fibroadenomatoid hyperplasia |
線維症 | fibrosis |
炎症 | mastitis |
リンパ球性乳腺炎 | lymphocytic mastitis |
急性炎症 など | acute mastitis, etc |
放射状瘢痕(RS)・複雑型硬化性病変CSL | radial scar, complex sclerosing lesion |
非浸潤性乳管癌 | non-invasive ductal carcinoma |
管内成分優位の浸潤性乳管癌 | invasive ductal carcinoma with a predominant intraductal component |
浸潤癌 | invasive carcinoma |
W.所見用語
乳管の拡張 | 乳管が拡張したもの 部位および内部エコーの有無を問わない |
乳管壁の肥厚 | 乳管の壁が通常より厚くなっているもの |
乳管内腔の広狭不整 | 乳管内部の無エコー域の広狭不整 |
乳管・小嚢胞内エコー | 乳管・小嚢胞内に以下のようなエコーが認められることがある |
充実性エコー | 乳管・小嚢胞内の充実性のエコー |
流動性エコー | 流動性が観察されるエコー |
線状高エコー | 乳管内の線状の高エコー |
点状高エコー | 乳管・小嚢胞内の点状の高エコー |
微細点状高エコー | 乳管・小嚢胞内の微細点状の高エコー(1mm以下) |
多発小嚢胞像 | 乳腺内に多数の小嚢胞が認められるもの |
乳腺内の低エコー域 | 周囲乳腺あるいは対側乳腺と性状を異にする低エコー域 |
斑状低エコー(まだら状・斑状・豹紋状) | 比較的小さな低エコーがまだらに存在するもの |
地図状低エコー | 斑状低エコーが融合したようにみえるもの |
境界不明瞭な低エコー | 境界が不明瞭な低エコーが存在するもの |
構築の乱れ | 明らかな腫瘤像形成を伴わず組織の構築が乱れているもの |
X.評価の進め方
1) 乳管の拡張を主体とする病変
各所見のカテゴリーと主な対象疾患を掲げる。
a)乳管内エコーを認めない病変
乳輪をこえて末梢側にのびる内腔にエコーを伴わない拡張乳管。炎症による壁肥厚を伴うこともある
両側、多発の場合: カテゴリ−2 乳管拡張
単一区域の場合: カテゴリ−3 乳管拡張、乳管拡張症、上皮過形成、
乳管内乳頭腫症、非浸潤性乳管癌
* 乳管内増殖性病変が存在する場合には二次的な乳管拡張を生じることがある
* 拡張乳管内エコーの有無を迷う場合はb)として評価する
b)乳管内エコーを認める病変
乳管内エコーには充実性エコー、流動性エコー、線状高エコー、点状高エコーと微細点状高エコーがある。充実性エコーは乳管上皮の増殖性病変によることが多く、壁の性状の慎重な観察、評価を要する。流動性エコーは乳管内の液体にエコーを産生する成分が浮遊し、流動性を認めるもので濃縮乳汁や血液によることが多い。
充実性エコーの形状による評価
立ち上がりが急峻な場合:カテゴリー3 乳管内乳頭腫
立ち上がりがなだらかな場合(広基性):
多くの場合内腔の広狭不整をともなう。
カテゴリー3、4、5 乳管内乳頭腫、上皮過形成、非浸潤性乳管癌
充実性エコーの分布による評価
両側、多発の場合:カテゴリー2 濃縮乳汁
乳頭近傍に1ヶ所のみの場合:カテゴリー3 乳管内乳頭腫
区域性、あるいは連続する場合:
カテゴリー3、4 上皮過形成、乳管内乳頭腫症、
非浸潤性乳管癌
*乳管内石灰化と考えられる高エコースポットを随伴する場合: カテゴリー4,5 非浸潤性乳管癌、管内成分優位の浸潤性乳管癌、 上皮過形成、乳管内乳頭腫症
2)多発小嚢胞像
乳腺内に多数の小嚢胞がみられるもの
内部が無エコーか低エコーかの判別に苦慮するものも含まれる
限局性あるいは区域性の分布を示す場合:カテゴリー3 乳腺症、非浸潤性乳管癌
* 石灰化と考えられる高エコースポットが嚢胞内に存在する場合:乳腺症の可能性
びまん性の分布を示す場合:カテゴリー2 乳腺症
3)乳腺内の低エコー域
周囲乳腺あるいは対側乳腺と性状を異にする低エコー域
a)斑状または地図状低エコー
びまん性・散在性に分布する場合:カテゴリー2 乳腺症
局所性に分布する場合:カテゴリー3 乳腺症、非浸潤性乳管癌
*乳管内石灰化と考えられる高エコースポットを随伴する場合:
カテゴリー4、5 非浸潤性乳管癌、管内成分優位の浸潤性乳管癌、
浸潤癌
区域性に分布する場合:カテゴリー4 非浸潤性乳管癌、乳腺症、浸潤性小葉癌
*乳管内石灰化と考えられる高エコースポットを随伴する場合:
カテゴリー5 非浸潤性乳管癌、管内成分優位の浸潤性乳管癌、
浸潤癌
片側乳腺全体に分布する場合: カテゴリー2〜5 正常のバリエーション、乳腺症、局所進行乳癌
b)境界不明瞭な低エコー
びまん性・散在性に分布する場合:カテゴリー2 乳腺症、炎症
局所性に分布する場合:カテゴリー3 乳腺症、炎症、非浸潤性乳管癌
*乳管内石灰化と考えられる高エコースポットを随伴する場合: カテゴリー4、5 非浸潤性乳管癌、管内成分優位の浸潤性乳管癌、 浸潤癌
区域性に分布する場合:カテゴリー4 非浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、乳腺症
*乳管内石灰化と考えられる高エコースポットを随伴する場合:
カテゴリー5 非浸潤性乳管癌、管内成分優位の浸潤性乳管癌、
浸潤癌
片側乳腺全体に分布する場合:カテゴリー2〜5 正常のバリエーション、乳腺症、炎症、局所進行乳癌
4)構築の乱れ
明らかな腫瘤像形成を伴わず組織の構築が乱れているものをいう。
(注)腫瘤像にともなうものは随伴所見としての構築の乱れである。
乳腺内外の正常な構築の乱れ、ひきつれ
皮膚の瘢痕を伴う場合:カテゴリー2 瘢痕
皮膚の瘢痕を伴わない場合:カテゴリー4 浸潤癌(硬癌、小葉癌)、非浸潤性乳管癌、
放射状瘢痕・複雑型硬化性病変、瘢痕
判定の基準
カテゴリー | 説明 | recommendation |
0:判定不能 | ||
1:異常所見なし | 異常所見はない | |
2:良性 | 典型的な良性所見を呈する | 他の検査と一致すればABCは不要で6ヶ月以上の間隔での経過観察 |
3:良性の可能性が高い | (ABCを含む)更なる検査が必要。経過観察期間は2より短い。 | |
4:悪性の疑い | ABC、core biopsy、生検などによる診断 | |
5:悪性 | 悪性 | 適切な治療 |
* 時間的経過により所見が不変の場合には3→2になることもある。
所見が変化した場合には判定を上げることもある。
**画像診断と臨床との判定のギャップについて
この案では実際にはギャップはないと予想される
最終更新日 : 2003/10/01
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